上半身裸になり、ケープを巻いて診察室へ入ると、超ベテランって感じの男性医師が待っていた。
70歳は余裕で過ぎているんじゃないか。
仰向けや座った状態で胸や脇を触診をしていただいた。
昔から気になっていることがあった。
私は乳頭の先にアカのようなものが溜まりやすい。
先生に尋ねてみると、
「ティッシュを当てて汚い液体が付かなかったら大丈夫ですよ。」
液状のものは見たことがなく、常に固形状なので大丈夫か。
私の前に触診を受けていたおばさま達が、触診を終えた医師から「しこり触れませんね。」と言われているのが聞こえ、私もその力強い言葉を待っていた。
しかし私に対しては、
「・・・問題なさそう・・・ですね。」
なんか今までと違う!
本当に大丈夫??急に小声。
言い方違うと気になっちゃうんだけど。
続けて医師は、
「乳がんは定期的に検診を受けていたら命を落とす病気じゃないんですよ。がんが早期に見つかれば、ちょっとつまむだけの手術で終わります。でもがんが大きくなれば筋肉ごと取らなきゃならない。その後の生活にも影響が出てきます。だから定期的に検診を受けてくださいね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
頭を下げて診察室を出た。
看護師さんから、自己検診の方法を教えてもらった。
乳がんのマネキンを借りて、どこにがんがあるか探る機会を得た。
小さくのの字を書くように強めに押すと、明らかな違和感が指先に触れる。
柔らかい細胞の中に、硬い異物。
石ころのような、がんの見本を簡単に見つけることができた。
マネキンの乳房には、えくぼのようなくぼみもあった。
これも乳がんのサイン。
乳がんは自分で見つけることができる唯一のがん。
注意深く自分の体に向き合っていれば、胸、ましてや命など失わなくて済む可能性は高いはずだ。
二つ実をつけた私の木
ある日だれかが奪いにやってきた
おねがい、実はとらないで
いいや、わたしはこの木ごと倒しに来たのさ